ヒーター設計に必要な情報
当社がヒーターを設計するために必要な情報は下記の通りです。
- ・電圧(V)
- ・サイズ
- ・電力(W)
- ・周囲環境
- ・使用方法
お問い合わせの際、
電圧・ヒーターサイズ・電力のご指定があればヒーターの設計は可能です。
※当社の設計範囲を超えていた場合は要打ち合わせとなります。
しかし、必要な電力が決まっていない(分からない)場合がほとんどだと思います。
そこで、電力のかわりに被加熱物(暖めたい物・空間)の
希望温度とそれが置かれている周囲環境をお聞かせ下さい。
全ての条件を加味した上でヒーターのご提案をさせて頂きます。
ヒーターの温度について
ヒーターの温度は単位面積あたりの電力(W数)で決まります。これを「ワット密度(W/㎠)」といいます。
つまり、W数とヒーターのサイズ(面積)が決まればそのヒーターの上昇温度が分かります。
※あくまでヒーター単体の温度であり、被加熱物の温度ではありません。
当社ではご希望の温度、使用条件をもとに適切なW数を算出し、確実に温度が到達するよう安全率を加味して
ヒーターのご提案をさせて頂きます。
※安全率とは別名「余裕率」とも言われ、電源電圧の降下率、ヒータの製作容量誤差、熱量計算時の計算誤差などを表します。
それらを加味して、当社は
安全率を1.2倍程度としています。
(※)お客様の使用環境や使用温度によって適正ワット密度は変わりますのでご注意下さい。
温度グラフの解説
アルミ箔ヒーターとシリコンラバーヒーターのワット密度の違いによる温度上昇グラフです。(※)
(※)下記グラフは一測定例であり保証値ではありません。
左図:
アルミ箔ヒーター。
右図:
シリコンラバーヒーター。
アルミ箔ヒーターでは両面テープの耐熱温度が120℃のためワット密度は0.2(W/cm²)以下に、
シリコンラバーヒーターではラバーシートの耐熱温度が200℃のためワット密度は0.6(W/cm²)以下に設定します。
(※注意点※)
上図は周囲温度からの温度上昇値です。
使用環境によって適正ワット密度が変わります。
温度分布について
一般的なシートヒーターの温度は中央部が高く、周辺が低くなる傾向があります。
また発熱線の配線部は非配線部よりも高くなります。
当社がサーモグラフィで撮影した資料がありますのでご紹介します。
【測定条件】
・アルミ箔ヒーターをプラスチック板に貼り付ける
・
プラスチック板の表面温度を測定(※)
・水平放置
・ワット密度:0.1(W/cm²)
・実験試料サイズ:300 × 300mm
(※)アルミの反射によってサーモグラフィーで測定不可のためプラスチック板を使用しています。
アルミ箔1層構造の場合の測定結果
上図をご覧頂くと、中央部のほうがより赤くなっていることが分かります。
また発熱線付近がより赤くなっていて、温度が高いことがわかります。
一般的なヒーターの場合、大抵このような温度分布になります。
お客様の中には「もっと温度が均一なヒーターが欲しい!」という方もおられます。
その場合、配線パターンを変更したり外側の余白を減らしたりしての対応も可能です。
ご要望があればヒーターを金属板に貼り付け加工することもあります。
当社では上記加工無しで簡単に温度を均一にするためアルミ箔を2層にしたヒーターも製作しております。
その効果を下記サーモグラフィの資料でご確認下さい。
アルミ箔2層構造の場合の効果
通常のヒーターだと発熱線部や中央部に熱が集中していましたが、アルミ箔を2層にすることで熱がより均一になりました。
ヒーターまたは被加熱物に温度ムラがあると、シビアな温度制御が難しくなります。
※温度の低い部分で制御すると過加熱、温度の高い部分で制御すると加熱不足になるかもしれません。
当社ではお客様のご使用方法に合わせたヒーターをご提案させていただきます。
温度制御について
ヒーターには自己温度制御性が無いため
必ず温度制御する必要があります。
ワット密度でヒーターの上昇温度を把握しても、周囲環境によって到達温度が変わるからです。
下記のグラフは昇温測定した資料です。
【測定条件】
・使用製品:シリコンラバーヒーター
・サイズ:300×300mm
・SUS板【 t 1mm】貼付け(SUS板とはステンレス板の略語です)
・空中放置
・ワット密度:0.1W/cm²
上図のシリコンラバーヒーターの昇温測定結果より
周囲温度が約20℃の時、表面温度が約70℃で落ち着き上昇温度が約50℃ということが分かります。
しかし仮に、周囲温度が40℃の場合、50℃上昇して表面90℃まで到達が予想されます。
このように、ヒーターの上昇温度+周囲温度(周囲環境)によって到達温度が変わるため温度制御は必ず必要です。
当社では下記の温度制御装置を標準で取り扱っております。
お客様のご使用方法、温度制御の精度、コスト、ヒーターとの相性などを考慮してご提案させて頂きます。
1、サーモスタット(温度一点固定型)
【特徴】
・
コストが安い
・
コンパクト
サイズ(t6 × 20 × 35mm)
・
ダブルプロテクト
温度ヒューズが標準装備で安全性がさらに向上。
・
保ちたい温度を選択
20℃~100℃まで選択可能です。
(40℃~80℃までは5℃刻みに、20℃~40℃・80℃~100℃までは10℃刻みで在庫を持っているため
柔軟に対応可能。また、その他の細かい温度選択や特注にも対応できます)
2、温度センサーと温度コントローラー(温度任意変更型)
【特徴】
・
電子的に温度制御
種類が多く、お客様の用途に合わせてご提案致します。また要望があれば特注品も対応可能です。
・
温度センサーと温度コントローラーがセット
温度センサーは3種類(熱電対・サーミスタ・白金)取り扱っております。
※ご要望に応じてヒーターにセンサーをお取り付けします。
取り扱い各種 温度センサー
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熱電対 |
サーミスタ測温体 |
白金測温抵抗体 |
写真 |
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概要 |
2種類の金属から生じる温度差(熱起電力)を利用して、測定したい箇所の温度を知ることができる。 |
金属酸化物や半導体などの電気抵抗が温度で変化することを利用して温度を測定する。 |
基本的に熱電対と同じ原理の測定方法だが、素材にきわめて純度の高い白金線を抵抗体としてるため精度が高い。 |
長所 |
・コストが安い
・高温まで測定可能
・温度測定範囲が広い
・熱応答が早い
・振動・衝撃に強い |
・熱応答が早い
・リード線の抵抗の
誤差が小さい |
・精度が高い |
短所 |
・測温抵抗体と比較すると測定精度に劣ります |
・温度測定範囲が狭い
・振動・衝撃に弱い |
・コストが高い
・熱応答が遅い
・振動・衝撃に弱い
・リード線の抵抗の
影響を受けやすい |
取り扱い各種 温度コントローラー
型式 |
DG2N-100 |
MET3 |
MTCS |
写真 |
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特徴 |
操作性○、コンパクト |
電源スイッチ付 |
PID制御、無接点リレー(※) |
温度 |
-40℃~200℃ |
-40℃~140℃ |
-40℃~200℃ |
温度
センサー |
熱電対 |
サーミスタ測温体 |
熱電対、白金測温抵抗体 |
型式 |
MET2 |
E5LD-6 |
TC-1N |
写真 |
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|
特徴 |
コンパクト(名刺サイズ) |
ローコスト、コンパクト
制御出力3A |
タイマー機能付 |
温度 |
-40℃~140℃ |
-20℃~60℃ |
-40℃~200℃ |
温度
センサー |
サーミスタ測温体 |
サーミスタ測温体 |
熱電対 |
型式 |
TKT-44(特注品) |
METD |
EC-1 |
写真 |
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特徴 |
多連式、PID制御
無接点リレー |
ダイヤル式
コンパクト(名刺サイズ) |
ダイヤル設定 |
温度 |
-40℃~200℃ |
0℃~60℃ |
-20℃~100℃ |
温度
センサー |
熱電対、白金測温抵抗体 |
サーミスタ測温体 |
熱電対 |
(※)
PID制御とは・・・温度制御の種類の中で最もよい制御特性が得られます。
→
設定温度との誤差が非常に少ないことが期待できます。
無接点リレーとは・・・半導体リレーを用い物理的な接点を使わずに回路をon/offします。
→
長寿命に期待できます。
ちなみに無接点リレーの反意語は有接点リレーといい、金属接点が物理的に接触したり離れたりする方法です。
シートヒーターの寿命
シートヒーターの耐久寿命はいつか必ず来ます。
ヒーターの保証ではありませんが「何年くらい使える?」のご質問には当社の実績、または各材料からみた目安をお伝えしております。
1、シリコンラバーシートの寿命
シリコンラバーヒーターの絶縁材料にはシリコンラバーシートを使用しております。
シリコンラバーシートの寿命は
熱的要因に左右されます。
シリコンラバーシートの熱劣化 参考データ
熱的要因としては、周囲温度、運転温度によるシリコンゴム絶縁物の熱劣化が挙げられ、
当社ヒーターに使用のシリコンラバーシートの熱的寿命特性を右図に記載しています。
同特性から 200℃
連続使用の場合、寿命は 100,000 時間(約11年)程度と推測できます。
当社シリコンラバーヒーターを使って頂いているお客様から
「
10年以上変わらず使っているよ」という声をよく聞きます。
もちろん10年以上保証する限りではありませんが、そのような
実績が多数あります。
(※注意点※)
右図のデータは一試験結果であり、保証値ではありません。
2、シリコンコードヒーターの寿命
アルミ箔ヒーターに使用する発熱線はシリコンコードヒーターです。
シリコンコードヒーターの寿命は熱的要因に左右されます。
シリコンゴムの熱劣化 参考データ
右図はシリコンコードヒーターに使われるシリコンゴムの推定寿命を表したグラフです。
使用温度が上がるにつれて経過日数(推定寿命)が短くなっていきます。
例えば使用温度が「182℃」
連続使用の場合。
経過日数はおよそ2000日(約5年)が推定寿命だと計算できます。
使用温度が高くなれば推定寿命が短く、
使用温度が低くなれば推定寿命が長くなる傾向があります。
(※注意点※)
こちらのグラフは決して保証値を表すものではなく、一測定例です。お客様の使用条件によっては推定寿命が長くも短くもなります。
また、アルミ箔ヒーターの材料に両面テープを使用していますが
こちらの耐熱温度は120℃なので実験例の182℃ではご使用はできません。
アルミ箔ヒーターの場合はシリコンコードヒーターの寿命より先に両面テープの劣化が寿命に繋がると予想されます。
ご不明な点ご質問等ございましたらお気軽に
お問い合わせ下さい。
今後も皆様に有益な情報を提供出来るよう、技術ページの拡充に努めてまいります。